【米国株】クエスト・ダイアグノスティクス[DGX]:診断情報サービスのリーディングプロバイダー | 米国株の配当・増配銘柄を徹底解説 | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア

全米の病院・医師の半分がサービスを利用、米国人口の3分の1が同社の検査を受けている

クエスト・ダイアグノスティクス[DGX]は、診断検査、情報、およびサービスの大手プロバイダー。主な事業は診断情報サービスで、臨床検査から得られたデータを基に、診断に関する洞察を提供し、「医師や組織が、患者の健康状態を改善するための行動を取れるようにすること」を目的としています。サービスは、定期的な血液検査から感染症検査・薬物検査など幅広く、また、神経学や遺伝学、がん領域などの「難解な」特別な検査サービスも提供しています。最近では、分子ゲノミクスやコンパニオン診断、新生児スクリーニングといった、「より高度な」診断分野に注力しています。先進診断への投資により、5つの主要臨床領域で2桁の収益成長が見込まれます。

同社は全米に張り巡らせた検査ネットワークを通じてサービスを提供しています。2300を超える臨床検査室と患者サービスセンター、瀉血(しゃけつ)専門医、その他健康専門家などからなる広大なネットワークが構築されており、これは世界最大規模と言われます。このネットワークを通じて医師や病院、会社(雇用主)など幅広い顧客にサービスを提供しています。

同社によると、全米の病院・医師の半分にサービスを提供しており、その結果、米国人口の3分の1が毎年同社の検査を受けています。規模の大きさは近距離でのサービス提供を可能とし、検査期間の短縮化や、自動化効果の最大化という面で競争力となっています。このほか生命保険業界向けの情報技術ソリューションとリスク評価サービスも提供していますが、売上構成比は5%未満と小規模です。

主な収益源は検査数量に基づく料金ですが、血液検査などの検体検査は反復的に利用されることから、収益基盤はストック型になっていると言えます。また病院や製薬会社、保険会社と長期契約を結ぶことで、安定した収益源が確保されているのも特徴です。売上は約90%が医療機関(病院と医師)向けのサービスによるもので、医師が68%、病院が20%を占めます。残りの12%は、保険会社や製薬会社、また個人消費者で構成されます。2024年の売上高は99億ドルでした。

成長戦略:買収で検査メニューや地理的ネットワークを強化

米国ラボ市場の規模は890億ドルで、病院検査室から商業臨床検査室、診療所など、非常に多くのプレーヤーによって細分化されています。同社はそこでトップシェアを獲得していますが、それでも10%に過ぎません。競合とされるラボコープ・ホールディングス(Laboratory Corporation of America)[LH]のシェアも同じくらいで、この2社で市場の約20%を占めています。

2025年以降、売上高は年平均4%~5%で、調整後EPSは7%~9%で成長すると同社ではみています。売上高成長率のうち1~2%は買収による効果です。買収は同社の重要な成長戦略であり、買収によって検査メニューを拡大し、地理的ネットワークも拡大しています。過去10年間で完了した買収は約20件。2024年度中には約22億ドルを投じ8件の買収を完了しました。

2024年で最大の買収は、カナダを拠点とする臨床検査プロバイダーLifeLabsの買収(10億ドル)でした。LifeLabsは、ブリティッシュコロンビア州、オンタリオ州、サスカチュワン州で5の研究所、350を超える収集センター、宅配と移動式瀉血(しゃけつ)専門医の広範なネットワークを通じて、診断情報とデジタルヘルス接続システムを提供しています。2024年中には、約1億4000万件の臨床検査を実施しました。この買収により、同社には約6000人の労働者が加わり、売上は7億1000万ドル増加する見通しです。

また2025年に入ってからもフレゼニウス(Fresenius)社から腎臓に特化した検査サービスを提供するSpectra Laboratories社の一部資産を買収することを発表しました(2025年後半に完了予定)。買収により透析関連検査機能がポートフォリオに追加されることとなります。

今回買収を発表した透析関連検査は、長期的な成長分野として強化している分野で、このほかにも、多発がんの早期発見とアルツハイマー病の診断分野についても、買収とパートナーシップを通じて診断能力を高めています。例えば2023年にはアルツハイマー病の進行を予測するための血液検査、前立腺がんバイオマーカー検査、女性向けの家庭用不妊検査など、いくつかの新製品がリリースされました。こうして買収はパイプラインを拡充しており、売上に繋がっていきます。

注目:デジタルパソロジーの進展と事業強化

また、デジタルパソロジーの進展も注目したいところです。デジタルパソロジーとは、病理診断材料をデジタル化すること。医療施設内や遠隔地の専門家が閲覧・診断することを可能とするほか、高解像度での画像解析や手軽な保存を実現します。効率も精度も上がることから、今後普及が求められている分野です。

ただ、同社によるとまだ病理学のデジタル化は5%未満とのこと。今後の市場拡大が予想されるところです。Grand View Research社によると、デジタルパソロジー市場は、約10億ドルで、2030年までCAGR8%で成長すると予想されています。

こうした中、同社は2024年6月に、解剖学的およびデジタル病理学検査サービスを提供するPathAI社の一部のラボ資産を買収しました。買収によって同社の疾病診断における人工知能(AI)とデジタル病理診断能力が強化されます。また別の契約で同社はPathAI社のAISightデジタル病理画像管理システムを全米の病理ラボに導入することを発表しています。同社は現在、20の病理センターを運営しており、収集したサンプルを輸送し、病理医によるレビューを行っています。デジタルパソロジーでは輸送などが必要ないため、その分のコストが減り利益率の向上も期待されます。

自動化によるコスト削減が実を結ぶ

効率化の面では、自動化とAI活用によってコストを削減する「Invigorate(インビゴレート)」プログラムに取り組んでいます。現在、自動化されたラボが3つ、そのほかでも様々なロボットやシステムを導入することで、効率性を高めています。

例えば、反復作業や搬送作業を協働ロボットで補完することで、サンプルの処理効率を2倍に向上。デジタル細胞診の導入により生産性を40%改善。結核検査に必要なチューブラベル貼りとラックへの収納が不要になり、人手が約90%削減され処理速度が約2.5倍向上したなど、多くの効率化が報告されています。

これらの自動化により、年間3%のコスト削減を達成しています。重要なのはこうした自動化によるコスト削減を実現できるのは、規模の経済があるからこそ。事業規模が小さく、受託する検査が少ないままでは、自動化の必要もなく、検査あたりの利益率も上げられません。例えば一人の病理医が一日に10件こなすのと、自動化によって一人で一日に100件の検査をこなすのとは大きく儲けが変わってきます。

総合評価:確立された事業基盤と良好なキャッシュフロー、株主還元を評価

臨床検査は医療業界に必要不可欠であることから、業績は安定的です(コロナ禍での検査特需とその反動期を経て、足元の業績は元のペースを取り戻しています)。そのためキャッシュフローも良好で、20年間にわたってプラスが維持されてきました。毎年営業から10億ドルを生みだし、5億ドルから10億ドルのフリーキャッシュフローを残してきました(コロナ特需の年を除く)。

注目すべきはキャッシュフローの多くを株主に還元していることです。過去10年間を見ると106億ドルのフリーキャッシュフローのうち85%以上を株主に還元しました。コロナ特需を受けフリーキャッシュフロー以上に還元した2021年と2022年度を除いても、平均して70%が株主に還元されました。

今後については、2025年~2027年までの3年間の資本計画として、3年間で営業から45~50億ドルを生み出し、15~17億ドルの設備投資を行うとしており、フリーキャッシュフローは30~33億ドルとなる試算で、15億ドルを買収資金に使い、17億ドルを株主に還元する計画です。内訳は配当10億ドル、自社株買い7億ドル。配当は14年連続増配の実績を持ちます。

増配率はおおむね7%程度で推移しており、配当性向も40%以下で推移しています。配当性向を低くすることで、めぼしい買収ターゲットがない場合は自社株買いで還元するという柔軟な資本政策となっています。自社株買いは不定期ですが、この10年で発行済み株式数は22%減少しており、概ね毎年2.5%ずつ減ってきました。配当利回りは1.7%と低いですが、自社株買いによる一株当たり価値の上昇を考慮すると魅力は残されていると思います。

株価は高値圏を推移しています。バリュエーション面での割安さはあまり感じられませんが、今後相場全体の調整時などには注目できる銘柄だと思います。医療業界に必要不可欠な検査を提供する米国最大の企業であり、高齢化や予防医療診断検査の普及に伴う長期的な成長が見込まれます。市場は細分化されており、買収によるシェア拡大余地が大きく残されています。そしてそのための資金も備わっています。

Precedence Research社によると、世界の診断検査市場は2022年から2030年にかけて年平均8.6%で成長し、2030年までに3480億ドルに達すると予測されています。慢性疾患や感染症の有病率の増加、また高齢化と個別化医療の需要の高まりも市場成長を後押しすると考えられます。長期的にも、同社は市場成長とともに成長できるポジションにあり、将来的にはラボコープ・ホールディングス[LH]と市場を代表する存在になることが期待できると思います。例えばコカコーラ[KO]とペプシコ[PEP]、ビザ[V]とマスターカード[MA]のように。

【図表1】クエスト・ダイアグノスティクス[DGX]年間配当推移 出所:Bloombergより筆者作成 ※2003年~2025年、2025年は予想値(直近四半期実績を通期換算)

【図表2】クエスト・ダイアグノスティクス[DGX]とS&P500の株価推移比 出所:Bloombergより筆者作成 ※クエスト・ダイアグノスティクス[DGX]株価は1996年12月31日を1とした数値

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