【為替】「中東有事」が円売りになった理由 | 吉田恒の為替デイリー | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア

異なった2つの「安全資産」の反応=スイスフランは買い

6月13日にイスラエルがイランを空爆、両国の軍事衝突懸念が強まると米ドル/円は上昇に向かった。そして22日、米国が軍事介入すると一時148円まで米ドル高・円安が広がった(図表1参照)。このように、今回の「中東有事」に対する為替市場の反応は米ドル買い・円売りだったが、それはなぜだったのか。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2025年4月~) 出所:マネックストレーダーFX 「有事」の発生で株価が急落するリスクオフ局面では、「安全資産」として通貨では円やスイスフランが選好されることが多かった。今回、米国株などは必ずしも急落したわけではなく、その意味ではリスクオフ局面と言えるかも微妙だったが、その中でスイスフランは買われたのに対し、円は上述のように売られる結果となった。なぜ、代表的な「安全資産」とされる2つの通貨の反応は異なったのか。

正反対だった円とスイスフランのポジション

足下における円とスイスフランの大きな違いは米ドルに対するポジションだ。円が空前の大幅な買い越しとなっているのに対し、スイスフランは売り越し(図表2、3参照)。その意味では、「中東有事」後の円売り、スイスフラン買いは、ともにポジション調整と見ることもできるものだった。

【図表2】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2005年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

【図表3】CFTC統計の投機筋のスイスフラン・ポジション(2015年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成 円とスイスフランの共通点に低金利通貨ということがある。このため金利差の観点からは売りポジションになっているケースが多かった。リスクとは過大なポジションをとっていることであり、このためリスクオフはそうした過大なポジションの修正になることが多い。

以上のように考えると、リスクオフ局面で円やスイスフランが選好されることが多かったのは、売りポジションの修正で買い戻されやすかったという面があったのではないか。ところが、最近の円は大幅な買い越しという異例の状況にあった。このためリスクオフで過大なポジションの修正となった時、それは円売りの反応になったということではないか。

原油供給遮断リスクで買われた米ドル=世界一の産油国の通貨

今回の「中東有事」局面の米ドル/円は原油価格との相関関係が目についた(図表4参照)。これは、原油輸入依存度の高い日本で、原油価格の高騰は過大な円買いポジションの見直し、つまり円売りになった面があったのだろう。

【図表4】米ドル/円とWTI(2025年5月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成 また、今回の原油価格高騰は、イランがホルムズ海峡を封鎖することで原油供給が遮断されるリスクへ反応した面が大きかったと考えられる。この原油供給遮断リスクに対して強い立場にあるのが、シェール原油登場で世界一の産油国となった米国だろう。その意味では、「世界一の産油国」である米国の通貨=米ドルが買われ、その結果として円売りになったという面もあったのだろう。

「中東有事」で円が売られると、円はリスクオフ局面でも「安全資産」として選好されなくなり、それは日本経済衰退の影響ではないかとの意見も一部にあったが、そういうことではないのではないか。

内容は参考用であり、勧誘やオファーではありません。 投資、税務、または法律に関するアドバイスは提供されません。 リスク開示の詳細については、免責事項 を参照してください。
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