【日本株】鉄道各社に追い風か、株主還元の強化やアクティビストの動きに注目 | アクティビストタイムズ | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア

日本株の投資家にとって6月は注目のシーズン

日本株の投資家にとって、6月は株主総会と配当金のシーズンです。日本の多くの会社は3月末決算のため、その3ヶ月後の6月までに株主総会を終え、株主総会前後で配当金が支払われるのが通常だからです。

決算が4月から5月にかけて発表されることが多いのは、東証など証券取引所が決算短信について決算期末後45日以内に開示することを求めているからです。期末の決算開示は終わった期(つまり2025年であれば2024年期)の決算に加え、その期(同2025年期)の見通し、会社によっては3年から5年ほどが中心の中期経営計画の発表も併せて行うことが多いため、その他の決算と比べてもとりわけ注目されます。

つまり、4月から5月にかけて、前期決算と今期見通し、場合によっては中期経営計画が発表され、さらに6月にかけて株主総会や配当金の支払いが行われるため、投資家にとってはイベントが盛りだくさんな時期となります。

配当総額は増える傾向、個人投資家1人あたり30万近い配当金の計算に?

そして、今期はアクティビストの存在も目立っているように思います。6月18日付けのブルームバーグの記事によると、三菱UFJ信託銀行の集計として、全株主による株主提案が398件と10年前の倍以上となり、アクティビストの株主提案は137件と過去最多になったとのことです。

2024年決算が出揃ったことを受け、集計を行っている野村證券によると、全上場企業の2024年度の配当総額は前期比15.6%増加の23.1兆円とのことで、これは過去最高となります。また、2025年度については、業績自体は減益を見込んでいるものの、配当総額はさらに9.9%増加の25.4兆円と予想されています。まさに、アクティビストなどの動きが目立つ中で、日本の会社の株主重視の動きが進んでいると言えそうです。

日本の株式のうち、個人の保有は概ね20%のため、23.1兆円の配当であれば5兆円近くが直接個人の手元に入ります。個人株主数は日本証券業協会のデータによると1525万人であるため、1人あたりで実に30万円近い配当金が支払われる計算です。自民党の参院選公約として昨今話題の「現金給付2万円」は、条件に応じた加算分などを合わせて3兆円強とのことなので、それ以上の金額が配当金として払われていることになります。

鉄道会社がアクティビストのターゲットになりやすい背景とは?

さて、上記のように、全体で見るとアクティビストを含む株主の声も強まる中で、会社は株主目線で還元などを増やしている状況です。そうした中、個別の会社の動きも気になるところです。

2024年11月の記事「【日本株】買収報道で上昇を続けるセブン&アイ株、そして、アクティビストの動きが観測された気になる銘柄とは?」で、旧村上ファンドが京浜急行電鉄(9006)、京成電鉄(9009)の投資を開始しているとの報道を紹介しました。

結果的には、「アクティビストが京浜急行電鉄に投資を開始、割安感目立つ鉄道業界の現況は?」でも解説したように、2025年2月、旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスが京急急行電鉄の大量保有報告を提出、実際に投資が行われていることが分かりました。その後、3月に共同での保有株数は発行済株数の6%強になっているという報告があって以降、大きな動きはありません。

この連載で、特に鉄道業界に注目しているのは、上記の例のように、鉄道会社はアクティビストのターゲットになりやすいと考えているからです。まず、上の記事にも書いているように、鉄道会社の株価は概ね過去に比べると割安な水準になってきており、株価上昇の余地が高そうということがあります。上記の記事以降、全体の株価は回復するなか、ややディフェンシブな銘柄は弱く、株価水準的にはまだ良くなってきていない状況です。

加えて、アクティビストのアプローチとして、保有資産の活用やグループ再編が挙げられることが多くなっています。アクティビストの活動の代表的なものとして、サッポロホールディングス(2501)への投資がありました。同社はビールを中心とした食品会社であるものの、不動産保有が多く、その活用を求められていました。サッポロホールディングスは食品事業に注力し、不動産事業は売却などを進めるとしています。実際、保有する恵比寿ガーデンプレイスの売却が直近で報道され、同社株はそれを好感して上昇しました。

他にも、最近話題のフジ・メディア・ホールディングス(4676)も、同社の不動産や保有コンテンツに注目されています。また、この連載でも定期的に取り上げてきたセブン&アイ・ホールディングス(3382)は、コンビニ事業が好調であるのに対し、スーパー・百貨店などの事業の収益性の低さを指摘されていました。結果的に、セブン&アイ・ホールディングスはスーパーや百貨店などを切り離すような判断をしました。直近では、上場子会社であったセブン銀行(8410)株式を売却することも話題になっています。

相対的に株価が低い中、注目に値する鉄道会社の「保有不動産」と「グループ戦略」

ご存知の通り、多くの鉄道会社は自社路線網を中心に有力な立地の不動産・土地を多数保有しています。小田急電鉄(9007)と京王電鉄(9008)は新宿を中心に不動産を保有しており、再開発を進めています。京浜急行電鉄は上記の2024年11月の記事でも紹介したように、品川に多くの不動産を有しており、リニア開業に向けて注目されています。相鉄ホールディングス(9003)は横浜駅周辺の高島屋横浜店や横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズ、横浜ビブレなどの地主です。阪急阪神ホールディングス(9042)はインバウンドでも注目される大阪梅田の大地主です。名古屋鉄道(9048)は名古屋駅周辺の土地を保有し、その再開発を進めており、西日本鉄道(9031)も福岡天神周辺で同様です。

また、各社とも上記のような不動産業はもちろん、小売業や観光・ホテル業など様々なグループ会社を有しています。スーパー・百貨店業界やホテル業界、旅行業界では、鉄道会社の名を冠した会社に存在感があると言えそうです。こういった鉄道会社のグループ戦略については、「トランプ関税で注目集める鉄道会社、各社の事業構造や注目の会社は?」の記事で詳しく取り上げていますが、多くの鉄道会社は売上の過半を主力の鉄道・運輸事業以外から稼いでいます。

実際、西武ホールディングス(9024)は鉄道業に加え、プリンスホテルなどのホテル事業や、それに関連する優良不動産を多数保有していました。その同社にはアクティビストが声を挙げ、保有不動産の活用を進めたことから、鉄道会社の中で比較的好調な株価水準を維持しています。また、京成電鉄(9009)はオリエンタルランド(4661)の筆頭株主で、アクティビストが投資を行っていることでも知られています。

つまり、鉄道会社は相対的に株価が低い中、その保有している不動産を中心とした資産やグループ構成などに見直しの余地があるとみられ、今後もアクティビストの投資などがあり得そうです。そして、冒頭で書いたように、4月から5月にかけて鉄道各社でも決算発表や中期経営計画が発表されており、株主還元の強化や保有資産の活用・事業の見直しが多数出されています。アクティビストの投資を踏まえての動きとも思われ、その内容に注目してみましょう。

アクティビストの投資が意識される中、鉄道会社は不動産の再開発や株主還元強化に積極的

まず目立ったのが、保有不動産の活用です。京王電鉄はマンションデベロッパーを子会社化するなど不動産事業に積極的ですが、今回、不動産の再開発を大きく挙げており、新宿駅の再開発や沿線の再開発などに言及しています。併せて目立ったのが、保有不動産をREITに売却するなどにより、活用していくというものです。名古屋鉄道は私募ファンドに加え、REIT事業に参入することを発表しており、鉄道各社において開発のみならず、売却することで回転していくような方向性が示されています。西武ホールディングスが同様の不動産活用モデルを発表し、主要物件の売却などを行っており、それに続こうというものです。

同じく目立つのが、株主還元の強化です。中期経営計画に合わせて、キャッシュフローの長期計画を発表している会社も多く、通常のビジネスによる収入、営業キャッシュフローの活用に合わせ、資産売却などによる資金を得ることを企図しています。合わせて、自社株買いも含めた株主還元の発表をしている会社が多く、総還元性向の拡大、配当の増加や累進配当(毎期配当金額を増額していく)などが発表されています。

これまでの連載でも紹介してきたように、運賃の値上げや不動産市況の好調などから、鉄道会社の業績は好調で還元する原資は十分にありそうです。不動産市況の好調は資産売却にも追い風です。そうした中で、各社が積極的な動きを進めており、改めて注目してみる価値はあると言えそうです。

内容は参考用であり、勧誘やオファーではありません。 投資、税務、または法律に関するアドバイスは提供されません。 リスク開示の詳細については、免責事項 を参照してください。
  • 報酬
  • コメント
  • 共有
コメント
0/400
コメントなし
  • ピン
いつでもどこでも暗号資産取引
qrCode
スキャンしてGateアプリをダウンロード
コミュニティ
日本語
  • 简体中文
  • English
  • Tiếng Việt
  • 繁體中文
  • Español
  • Русский
  • Français (Afrique)
  • Português (Portugal)
  • Bahasa Indonesia
  • 日本語
  • بالعربية
  • Українська
  • Português (Brasil)